乳癌の早期診断

MRI検査が最もすぐれている

乳癌はどんどん増えています。2015年は癌患者全体が98万人で、女性では乳癌患者数がついに第1位となりました。乳癌罹患者は約9万人と推定されています。臓器別の癌死亡者では乳癌が第5位で、 年間1万3000人が乳癌で死亡しています。

それでも、早期乳癌の治療成績は悪くなく、乳癌進行度0期(非浸潤癌、乳管や小葉内限局型)や1期(直径2cm以下、リンパ節転移なし)では手術後の5年生存率は100%と91%です。ところが4期では10%に下がります。乳癌死亡を減らすためには乳癌の早期診断が大変重要です。

乳癌を早期診断するには実際にはどうすればいいのでしょうか。
1)自己触診;まずは、ご自分の手の平で優しく、乳房に触れてみて、硬いしこりがあるかどうかを確認して下さい。なにか異常を感じたら、必ず医師に相談してください。実際に効果のある方法です。
2)自己触診で何も異常がないときでも、次に示すような危険因子がないかどうか、確かめて下さい。危険因子のある方は、必ず医師に相談してください。

<乳癌危険因子>

  1. 初潮が早い
  2. 月経周期が規則ただしい
  3. 月経周期が短い
  4. 閉経が遅い
  5. 出産未経験(未婚を含む)
  6. 高齢出産の経験がある
  7. 社会的階層が高い(高学歴など)
  8. 太っている
  9. 家族に乳癌の人がいる
  10. 良性の乳腺疾患の既往がある
  11. 子宮体癌、卵巣癌の既往がある
  12. 長期間ホルモン補充療法を受けている
  13. 片側乳癌になった既往がある
  14. 多量の飲酒をしている

3)画像診断
一般的には乳房X線検査と乳房エコー検査の組み合わせが、最初に行われています。
早期診断という点 からみれば、これでは不十分な点もあります。当院は乳腺MRI検査を早期乳癌診断方としてお勧めしています。 2007年のLancet掲載論文では早期乳癌(非浸潤癌)の検出率はマンモグラフィーが56%、乳腺MRI検査92%とされ、MRI検査の有用性が示されています。実際にはMRI検査が最も正確な診断方法であるとしてヨーロッパやアメリカでは乳癌のスクリーニング検査に用いられています。我が国でも2012年にMRI乳癌ドックの有用性が示されました。
4)定期的検査 乳癌発症率は30歳以後はどんどん高まりますから、ただ1回の検査が正常だからと言って、長期間大丈夫だとはいえません。できれば年1回程度の定期的検査をお勧めします。スタートは30歳頃でもよいと思われます。
5)CT検査で偶然、乳癌が発見されることも珍しくはありません。
下図に、実際の早期乳癌症例をお示しします。無症状でしたが他の目的で行った胸部CT検査で偶然乳腺腫瘍を発見しました。経過観察4年後に増大傾向があったため生検すると、乳癌細胞を認めました。
エコー検査でもMRI検査でも、乳癌は明瞭に描出されています。

エコー検査

エコー検査

MRI検査

MRI検査

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