膵臓癌の診断

新しい検査法MRCPは早期診断に有用

膵臓癌は40歳代から発生し、年齢とともにどんどん増加します。80歳代では人口10万対140程度まで、増加の一途をたどります。現在発見される膵臓癌の85%は手遅れで手術適応がなく、5年以上生存するのは2%に過ぎないと言われます(TED発表)。膵癌発生率は現在の日本では第5位ですが、人口の高齢化率が上昇すれば、発生率もさらに高くなると思われます。症例1-4にお示しするような膵臓癌の様々なタイプがあります。それぞれ、様子が異なっています。

症例1,2はすでに進行癌で、症例3、4が早期癌に分類されます。いずれのタイプでも早期癌の段階で発見するのは、なかなか困難です。症例1,2はいずれも検査紹介を受けて行ったもので、すでに進行がんでした。症例3、4は当院患者様で、慢性膵炎の経過観察を画像診断で行っていたところ、膵管内型膵癌を疑う事ができたものです。

膵癌特異的腫瘍マーカーとしてCA19-9などが用いられていますが、早期癌の診断に有効性の高いものはありません。テレビ番組TEDで紹介されたようにメソテリン蛋白の測定が早期癌でも有用であると言われていますが、まだ、実用段階にはないようです。やはり膵臓癌の早期診断は画像診断に頼らざるを得ないようです。

高精度の造影CTやMRIによる膵管画像(MRCPと呼ばれます)では1.5cm程度の膵癌も診断することができますので、左横腹や背部に違和感や痛みを感じる場合には、膵臓癌の可能性を除外してはいけません。単なる腰痛と考えて放置しないようにすることが、手術可能な膵癌を診断する最後の機会となります。MRCPは造影剤を用いない検査ですから、被験者にとって侵襲性が低く、年1回の検診やドックとしての有用性が高いと思われます。

1 症例1 72才男性
充実性進行癌
背部痛で来院
CT画像

2 症例2 64才 女性
嚢胞性進行膵癌
左下腹部痛で来院
CT画像
3 症例3  44才女性
膵管内腫瘍型膵癌
主膵管の不規則拡張
膵頭十二指腸切除
MRCP画像

filed under: